2009年04月01日

EPO北海道 吉村さんA

『生活や経済活動は必ず自然と繋がってくる』

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環境省北海道環境パートナーシップオフィス 吉村 暢彦さん

「芯を通して企業は環境と経済の両立を探って欲しい。スタートが省エネでも環境マネジメントでもいい。最終的に商品開発とか、企業戦略の中心に据えられるようなアイデアを持って欲しいし、一緒に考えられたら」とCSRやESD、生物多様性などをキーワードに環境・CSRの促進活動を展開する吉村さんにお話を伺いました。



北海道だから生物多様性

インタビュアー(以下EC):ではEPO北海道として今後予定している展開とかありましたらお話ししていただけますか?

吉村さん:まだ、確定していませんが、もう一人のスタッフの有坂が農林水産業をテーマにして行きたいと申してまして(笑)。

北海道の産業を考えたときに農林水産業は外せないところですよね。環境と観光は少しずつ取り上げられてきていますが、環境と農業、環境と水産業等といった環境と一次産業という視点をもっと進めていければと思っています。個人的にはこの中に含まれる「生物多様性」という観点に注目しています。CSRと生物多様性が次のターゲットです。

▲生物多様性
生命の豊かさを包括的に表した広い概念で、その保全は、食料や薬品などの生物資源のみならず、人間が生存していく上で不可欠の生存基盤(ライフサポートシステム)としても重要である。反面、人間活動の拡大とともに、生物多様性は低下しつつあり、地球環境問題のひとつとなっている。


EC:まだ、生物多様性というのは認知度が低いですよね。

吉村さん:そうなんですよ。北海道だからこそ生物多様性が大事だと思うのですが・・・。

この前参加したセミナーでも「里山」というキーワードが出ていました。本州の方が話すと生物多様性と里山というセットが多くなります。
でも、そんな話がでると必ず「北海道に里山はない」って意見がでます。里山という概念ではないのかもしれませんが、北海道には本州にはない大自然の近さがあります。観光や農業、水産業等が大きな産業である北海道は、言わば自然の上で飯を食っている、食わせてもらっていると考えてもいいのではないかと思いますので、里山の考え方も吸収して生物多様性を考えていくことができると思っています。

▲里山
集落や人里などに隣接している山で、樹木を伐採後などの森林の再生が図られて、人間の影響を受けた生態系が存在している状態。


EC:食糧自給率も日本全体だと約40%しかないけど、実は北海道だけであれば約200%もあるんですよね。なので改めて北海道を見直すというか、立ち返って経済の活性化に繋げて掘り起こしていければ新しい北海道の良さが出てくるかも知れませんね。

▲食糧自給率
1国内で消費される食料のうち、どの程度が国内産でまかなわれているかを表す指標。


吉村さん:“タコ足食い”って言葉がありますよね。自分で自分の足を食って最後には食うものがなくなったっていう話。僕は、北海道はタコ足食いをしていると思うんですよね。

先程も言いましたが、北海道のメイン産業は観光と農林水産業等一次産業だと思います。

例えば観光。風景がいいからそこにアクセスできる道路をつくった。でも、道路をつくったおかげ良い風景が台無しになった。なんて極端な話ですが大なり小なりあると思います。

昔と今の土地利用を比べるとものすごい量の森林がなくなっています。必ずアセスメントを行っているとは思いますが、その工事の範囲では大丈夫という評価でもそれが積み重なれば、すごい変化になっているのが分かります。

そこにあった風景が無くなっていたり、生き物の生息地が無くなっていたり付随する変化は多いと思いますよ。なんか北海道の魅力を削っているような気がしてならないです。そう考えたら、生物多様性っていう良いキーワードがでてきているので、このキーワードを活かして色々な事が出来れば、違う展開を起こせるかなと思いますね。

EC:今、環境問題が大きく取り上げられてきているけど、地球温暖化というのも実は生物多様性にぶら下がっている問題の一つなんだよというところから、私も会社で生物多様性というキーワードを使って行こうと思ってたところなんです。

吉村さん:そうですね。生物多様性はCSRの考え方その物だと思っていますね。さっきのタコ足食いではないですが、自社の立っているフィールドを守らずして発展はないですよって考えれば、生態系への影響を必ず考えるようになると思うんです。

多分C無しで、北海道にどうな影響を与えているんだろうってところからSRを考えていかないといかんなぁと思うんですよね。

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EC:調度、名前が出たので有坂さんにも少しお話を伺いたいと思いますが、まだ骨組みとかはまだ決まっていないとは思いますが、農林水産業とか観光を絡めた来年度の展開について、お話しして頂ける範囲で結構ですので有坂さんなりに考えていることをお話ししていただけますか?

有坂さん:はい、北海道の産業と言えば農林水産業。北海道では、そこを無視して環境は考えられないだろうと思うんです。一次産業は自然から作物なり魚などをもらって供給している訳じゃないですか。一番環境に近い産業なんですよね。

それはやっぱりEPO北海道として絡めていきたいと思っていて、環境問題というと堅かったり遠いようなイメージがあるじゃないですか。でも、食べることは身近なことなので、身近なことから考えてもらえるようなこと、食育というか食べるという基本のことから環境のことを考えてもらいたいと思っています。

「このような環境問題によって、○○が食べられなくなりますよ。」というようにすると、一般の人が取っつきやすいと思うんです。

氷が溶けてホッキョクグマが居なくなっちゃうかもとか言われて、可哀相とか思っても自分の問題じゃないから関係ないみたいな感じになると思うんですね。だけど、自分がいつも食べているものとかが影響するんだとか思ったらかなり実感として持てるんじゃないかという風に私は思ってるんです。

農業や水産業と環境の関わり方。例えば、獲りすぎ、農薬等の使用に始まって、省エネや省資源、生態系の持続可能性等、一次産業の人たちに考えてもらいたいというのもあるので、もっと環境に関わって欲しいと思っています。

それと、研究者の人たちも良い研究をしていると思うんですけど、それが世に出ないのでもっと世に出して欲しいとも思ってるんです。

吉村さん:そういったところでもっと出していければと思ってESDのセミナーというのを開催しているというのもあるんですね。

有坂さん:そういった研究者の人たちをもっと出せる場も作っていきたいですね。

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EC:研究者ではないけども、若い人たちが無農薬農家を始めたりとかの話を聞いたりするのですけど、実は世に出ていないだけで現実に取り組んでいる人たちも身近にいますからね。

有坂さん:困っていてどうして良いか解らない生産者の人たちがいるんで、そういうところを上手く研究者の人たちと繋げて、アイデアを交えて良い方向に持っていけたらというのもあるんですね。

吉村さん:問題の根底を辿っていくと俺の代で終わりだから好きなだけ魚を捕ってもいいんだみたいな人も中にはいるって聞いてるんですけど、だんだん魚も捕れなくなっているじゃないですか。最後自分が食べていければいいみたいな。そうなると後継者問題にも繋がってくるんですね。

後継者がもっといればその人たちのためにという発想が生まれるかもしれない。未来の子どものためにと言うよりも具体的に次の担い手のために管理していこうかなという考えが健全な考えだと思います。産業の中で担い手の鎖が切れ始めていることも問題の一つですね。

有坂さん:それはあると思います。どこも話を聞くと後継者不足と言います。漁業関係者だとだいたい平均60歳以上です。

吉村さん:一方で、派遣切りの話もありますが、切られた人たちはなぜ地方に行かないのか?なぜ東京にいるんだろう?って思うんですね。

人が偏っている、お金が偏っている感じがしますね。



環境と経済の両立を探って欲しい

EC:EPO北海道の活動から多くの企業を見てきていると思うんですけど、お2人に我々企業側に対して要望や提案、意見などを頂いて終わりにしたいと思います。

吉村さん:いっぱいありますけど(笑)。

まず大きなポイントは環境で稼いで欲しいと思うんですよ。環境で稼いで自分の芯を通してもらえれば企業活動として成り立っていけるだろうし、企業には環境と経済の両立を探って欲しいと。是非、突き抜けて欲しいですね。

例えば、スタートが省エネでも環境マネジメントでもいいんですど、最終的には商品開発とか企業戦略の中心に据えれることができるようなアイデアを持って欲しいし、一緒に考えられたらなと思いますね。

それと、僕も企業人だったことがあるので解るんですけど、企業の中も村社会だと思うんです。僕は工場の中の村に住んで居ましたからね。そんな中で、何かやろうとすると時間がかかりますし障壁も多いと思います。ただ、火は消さないようにして欲しいとなぁと。大同印刷さんや他の企業の環境担当者の方に最後まで足掻き続けて欲しいなぁと思いますね。

その時にCSRやESD、温暖化やら生物多様性やら色んな考え方、ツールを上手く使って、上手く行政を使って、他でやっていることを上手く使って、ムラを動かすためのトロイの木馬みたいになって欲しいなぁと思います。

いい時期が来るまでがんばって欲しいですし、その時期が来るまで情報収集して使えるネタを持って準備しておいて欲しいなぁと思いますね。それが企業の発展するためには重要なところかなと思います。

EC:継続して行かなければ芽も出ませんからね。環境担当者としては継続は力なりということを常に念頭に置いて今後も情報収集しながら準備して行きたいと思います。

吉村さん:ある一定の塀の中で活動していると視野が狭くなって、入ってくる情報も偏って来るし、そこから外を見るというのは大変な労力ですからね。

環境の担当の方って、前の会社の時でもそうだったんですけど、守る人なんですよね。コンプライアンスの順守とか。でも、僕は環境担当者って本当は営業に近いと思うんですよね。環境で営業する担当って感じです。

▲コンプライアンス
企業におけるコンプライアンスの意味として、法律や規則などの基本的なルールに従って活動を行うことで、近年、法令違反による信頼の失墜や、それを原因として法律の厳罰化や規制の強化が事業の存続に大きな影響を与えた事例が繰り返されているということから、企業活動における法令違反を防ぐという観点からよく使われるようになっている。


吉村さん:環境経営には環境営業みたいなのが必要になってきて、それが環境担当者が一番強みを発揮できるところなので、本業に直結するようなアイデアで商品開発したり、裏表が出来ないように社内を統一したり、社内外の整合性を取ったりと、なんか大変そうですけどそんな環境営業できる方が増えてくるといいだろうなぁって思っていますね。

EC:環境担当としては、社内の環境マネジメントシステムの継続と共に、環境を通して会社の内と外を繋ぐパイプ役にと考えていて、今話に出てきた環境営業というようなことも今後の重要なポイントですね。

吉村さん:企業活動に直結した成果があると分かり易いですね。普通だったら商品が売れたら成功となるわけですけど、環境のことやってますと言うだけだと評価はしにくい。そこに陥ったら環境担当の人達って辛いんだろうなと思うんですね。

だから、会社独自の環境パッケージみたいなのがあるといいんじゃないかなぁと思いますね。これをやったら、これだけの環境配慮に貢献できますよ!って分かるもの。印刷業だったら、このインクはCO2削減量○○、この紙は○○って感じで、それを印刷した際に記載しましょう!ってお客さんと一緒に、消費者にアピールできるようなパッケージがいいですね。

有坂さん:お金にならないと継続していけないと思うので、環境はお金にならないなんてことはないと私は思ってます。お金を稼ぐ道を模索して欲しいなと思いますし、一緒に考えていければと思います。

EC:CSRやESDなどのキーワードを通していろいろと学ぶことが出来ました。いつか環境と事業が結びつく展開を一緒に考える機会があれば是非ご相談したいと思います。その時はよろしくお願いします。

どうもありがとうございました。




▲環境省北海道環境パートナーシップオフィス(EPO北海道)
持続可能な社会の形成を目的として、環境保全活動を促進する基盤づくりを目的に活動する環境省のプロジェクト。

EPO北海道 http://www.epohok.jp/
北のCSR http://www.epohok.jp/hcsr/



※現在吉村さんは「北海道大学大学院地球環境科学研究院 GCOE環境教育研究交流推進室」にて勤務されています。
posted by beatnik at 00:00| インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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